自転車業界誌発行 Cycle Press/サイクルプレス
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【2016年3月号】電動アシスト自転車特集:新ドライブユニット、スポーツモデル、高級海外モデル、新たな潮流が市場拡大を牽引!?
 

消費増税前の2016 年こそ50万台出荷到達の分水嶺か
 
201603-01
 
 一般軽快車の落ち込みが深刻度を増す中、スポーツバイクとともに今後の商材として各企業が期待していた電動アシスト自転車。昨年の同時期に行った本誌のアンケートでは“いよいよ50万台到達か”という声が多く聞かれていた。だが、(一社)自転車協会の発表によれば、2015年の電動アシスト自転車出荷台数は46万9381台と、前年の47万4425台さえも下回ってしまった。ヨーロッパでは依然好調なこのジャンル、国内においても伸び続け、将来的には100万台市場という大台まで予測する向きもあったが果たして、伸びは停滞してしまったのだろうか。
  
2015年の電動アシスト車出荷は前年比1.1%減の46 万9381 台
 
2015年の減少はパナソニックの販売減か
 
 2012年こそ震災特需の反動から一時販売台数を落とすかたちになったものの、その後の2年間は再び上昇気流に乗った電動アシスト自転車。かつての「漕ぐ力が衰えた高齢者でも乗れる自転車」や「子どもを前後に二人乗せても安定した走行が可能」というだけの価値観は徐々に変化を見せ、通勤、通学、レジャーなどニーズも拡大。自転車の1ジャンルではなく全く新たなモビリティとして多くのユーザーが魅力的に感じるラインアップが整えられ、さらなるユーザー拡大の基盤が整ったかに見えた。そして各社の意気込みも並々ならぬものが感じられた本誌の昨年のアンケート結果だったが、数々の情勢がそれを阻む結果となった。
 
 確かに2014年に起こった消費増税前特需の反動、先行きが読めない為替動向などから販売減も危惧されていたが、それでも2015 年はトータルすると全体で5%は伸びるであろうと見られ、本誌の推測は48 万5000 台といったところだった。ヤマハ発動機は画期的な軽量新型ユニットをほとんどのモデルに採用し、軽量化だけでなく低重心化など乗り心地を格段にアップさせた。ブリヂストンサイクルは得意とする通学車に独自のデュアルドライブを採用したモデルを本格展開、この分野における電動アシストモデルの認知拡大に大いに貢献した。パナソニックサイクルテックも7万円台の価格を実現し、さらにUSB によるスマホ充電機能など昨今のライフスタイルに訴えたデザインのモデルで若い層を開拓するなど、市場を牽引する3大メーカーの戦略も確かなものだった。
 
 ところが3大メーカー以外はどうやら多くが円ドル為替レートを起因に目論見を外したようで、トーンダウンしてしまった感が否めない。2013年、2014年の2年間の盛り上がりに3大メーカー以外も貢献したことは間違いなかった。なぜなら彼らは3大メーカーと真っ向勝負するのではなく、完全に差別化した独自路線を貫いたからだった。東日本大震災後、自転車ブームに火がついたこともあり、この時期を境に特に電動アシスト自転車部門に他業種を含めた新規参入メーカーが相次いだ。これはヤマハによって新カテゴリーとして電動アシスト自転車が誕生した直後の1995年と似た現象であり、それだけ将来的な伸び代が期待されたカテゴリーだったのだ。
 
 他業種組で代表的な例がラオックスで、それまで10 万円を切ることが難しかった電動アシスト自転車において5万円台という衝撃的なプライスを実現し、さらにサイクルモードでの大型ブース出展や各媒体への積極的な広告展開で大きな話題を作った。これは市場を活性化させただけでなく家電系を含めた量販店や通信販売という従来にはなかった販売チャネルを開拓することに繋がり、認知度拡大にもかなり貢献したと見られている。ラオックスはその後、自社製品のバッテリー発火事故が複数件発生したことで自主回収や無償交換を余儀なくされ次第にトーンダウン。現在は事業撤退という格好になっているようだ。拡大された量販店、通販の市場には同様に3大メーカーの隙間を狙う他の中小のメーカーも追随、カイホウジャパンやペルテック、アイジュなどが低価格と品質面を両立した商材で市場に浸透していった。
 
 また、3大メーカーには都市部を中心とした子乗せモデルがリード商材となり、消費者側に子どもの安全安心を重視する気運が高まることによって高額商材が売れるようになった経緯がある。その結果、量販、業販問わず、流通経路もほぼ3大メーカーが押さえてしまうなど、逆に低価格で品質、信頼性を確保しても中小メーカーはそのブランド力から徐々に淘汰されていくこととなった。加えて、従来の自転車専門店も電動アシスト自転車については信頼性という部分を重視しており、安全性や品質に不安感のあるものは扱いたがらないという傾向が強くなっているようだ。
 
 さらに3大メーカーの牙城がより堅固となり新興勢力が弱まる中、2015年7月には市場を大きく揺るがす出来事が起こる。純日本製の信頼性を最もアピールしていたパナソニックのバッテリーの一部製品で製造上の不具合が発生。発煙・発火に至る可能性があることが判明したのである。同社は当然、即座に無償交換を実施。2015年の後半はその対応に追われ、販売店側も事態が落ち着くまではパナソニック製品の発注を控えようという動きとなった。パナソニックは販売台数業界トップだっただけに、全体に及ぼす影響も殊更大きかった。したがって社会情勢や、中小メーカーの伸び悩みよりも、これこそが2015 年の出荷台数減の最も大きな原因になったのではないかと考えられるのである。ブリヂストンやヤマハが秋口から特に販売を伸ばしたという話も、これを裏づけるものである。
 
続きは、「サイクルプレスジャパン」2016年3月号で。
 
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